最高裁判所第一小法廷 平成2年(行ツ)72号 判決 1992年5月25日
東京都渋谷区本町一丁目六〇番三号
上告人
勝和機工株式会社
右代表者代表取締役
岡邦彦
右訴訟代理人弁護士
三宅正雄
栃木県鹿沼市東末広町一九三四-二四
被上告人
鹿沼税務署長 茂手木福司
右指定代理人
下田隆夫
右当事者間の東京高等裁判所平成元年(行コ)第三三号、第八九号更正の請求棄却通知処分取消等請求控訴、同附帯控訴事件について、同裁判所が平成二年二月二〇日言い渡した判決に対し、上告人から一部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人三宅正雄の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。所論は、違憲をいうが、その実質は単なる法令違背を主張するものにすぎず、原判決に法令違背のないことは、右に述べたとおりである。論旨は採用することができない。
よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小野幹雄 裁判官 大堀誠一 裁判官 橋元四郎平 裁判官 味村治 裁判官 三好達)
(平成二年(行ツ)第七二号 上告人 勝和機工株式会社)
上告代理人三宅正雄の上告理由
原判決は、左の諸点において、事実を誤認し、法律の解釈適用を誤った違法のものである。
第一点 原判決は、昭和五九年の法改正による改正前の物品税法別表八の8の規定の解釈を誤り、この誤った解釈の上に立って、原判決のいう「本件物品」(セーリングボード商品名「ウインドサーフィン」)をもって、右規定に該当すると認定、判断したことは、重大な法令違背である。
原判決(一二枚目表一行から同六行)が、『旧法上は、本件物品の具体的品名を挙げた規定はないから、本件物品が旧法の解釈上も、課税物品であるというためには、本件物品が旧法別表八の8に揚げる「ゴムボート、ファルトボート及びゴムヨットその他これらに類する折りたたみ式の水上遊戯具類」に該当することが必要である』としたことは、形式論理的には正しい。
しかし、原判決は、ここですでに、法によらざる行政を是認し、法律の根拠なしに、解釈によって課税権の有無を判断しようとする誤りを犯している。
仮に、百歩を譲るとしても、原判決は、「その他」を並列的接続詞と解し、「これらに類する」を「これらに類似する」と解したことは、軽率な誤りである。
法令用語で、「Aその他の………」という場合は、Aは後に続く諸々の例示であり、「Aその他………」という場合は、Aと後に続く諸々がAと並列の関係にあることを示すものであることは、六法と呼ばれるような基本的法律、終戦前の法律については、ほとんど例外なしに、当てはまる用語例である。したがって、例えば、「A氏その他のお歴々」といえば、法令用語としては、A氏は、いわゆるお歴々の一人であることになるが、「A氏その他お歴々」といえば、A氏は、お歴々といわれるものではないことを意味することは、法律実務上の常識的用法であるが、視野を広くして注意すれば、容易に気づくように、戦後の立法例においては、このような折目正しい用法でない例が、法律においてさえ、必ずしも少なしとしないのである。
そのような法令については、「その他」が何を意味するかは、法文全体を合理的に理解して、判読・決定しなければならない。第一審判決もそうであったが、原判決は、伝統的用語例に慣れ、この接続詞を例示的接続詞と理解できなかったことは、裁判所らしからざる不注意、不用意といわざるをえない。この法文は、「ゴムボート…その他の…折りたたみ式の水上遊戯具類」と読まれるべきものであった。
上告人は、右法条は、ゴムボート、ファルトボート及びゴムヨットを「折りたたみ式水上遊戯具類」の例示とし、これらに同類の(「類する」は「仲間」を意味し、「類似」ということではない)折りたたみ式水上遊戯具類を別表八の8に掲げ、課税対象物品と定めたのである。と固く信ずる。そして、また、これがこの規定の合理的解釈である。と信ずるのである。
したがって、この解釈に立てば、本件物品が課税物品であると判定するためには、原判決のように、掲名物品との類似性などを問題するのではなく、同じ仲間、同じ物品の範疇に属する物品といえるかどうかによって判断すべきものである。しかし、原判決にとって遺憾ながら、セイリングボードは、新規参入の外国産であるが故に、ゴムボートなど掲名物品の仲間・同類ではないのである(原判決も、そのことに気づいたためか、本件物品をこれら掲名物品と別の物品であるが、類似性があると判断しているのである)。
本件物品は、右規定にいうゴムボートなどとは、どこをみても仲間ではない。同類というには、生産地が外国であることもあり、余りにも、目色毛色の変ったエトランゼなのである。
第二点 原判決は、主文に影響を及ぼすべき事項につき判断を遺脱している。すなわち、
原判決は、しきりに、水上遊戯具として本件物品とゴムボート等の掲名物品との類似性を問題にし、これを積極的に評価すべく全力を傾けているが、上告人からみれば、無駄な御苦労といわざるをえない。
努力を傾けるべき目標は、本件物品がゴムボート等と同類といえるかどうかであったのに、原判決は法規の読み違えから、その点の判断を全くしていない。
いうまでもなく、類似ということと、同類・仲間ということは、別の概念である。若干の類似性があるとしても、仲間でも、同類でも、親類でもないことはいくらでもありうる。
第三点 原判決は、根拠(理由)も示さず、安易に税務担当者の行政解釈を正当として認容しているが、これは、行政庁の違法な処分の取消・変更を通じて、行政庁の恣意を矯正し、法による行政の確立に資すべき司法裁判所の職務権限の行使を怠ったものであり、日本国憲法(第八一条)、裁判所法(第三条)の趣旨に蹂躙するものである。
原判決は、本件物品の輸入に関し、名古屋国税局が新しく登場した物品の扱いに困った名古屋税関に答えたところ及びそれを受けた「物品税取扱事例集課税物品編」という冊子の記載をもって、本件物品が課税対象とされる有力な根拠のようにいうが、名古屋税関史は、彼の経験と判断をもってしても、疑問があるから、伺いを立てたという事実こそ重くみるべきであり、「その解釈及び取扱いは、当初から定着していた」などというに至っては、その見識を疑わざるをえない。
「定着していた」という行政解釈が正しいという保証は、どこにもないのである。仮に、なにがしかの根拠があったとしても、それを、鵜呑みにするのでは、違法な行政処分の審査を司法裁判所に託した、法の、すなわち、国家の期待に添うものではない。
法律第何条に違反するというより以前の問題として、原判決の在り方は、法の趣旨に反する違法なものといわざるをえない。
第四点 原判決には、租税法律主義(憲法第三〇条・第八〇条)の基本理念を無視した違法がある。
国民は、法律の定める手続によるのでなければ、徴税されることがないことは、法治主義における罪刑法定主義と共に、我が国税制がとる基本的理念である。国民が(現実には一部の者を除いて)血と汗の結晶である収益をもって国家のため納入するのが税金である以上、国民の代表からなる国会が定めた法律によるのでなければ、納税義務のないことは、いうまでもない。本件物品については、これを課税対象とする旨の明文は、原審も認めるように、改正前の物品税法にはなかった。それがために、漸く国民の間に普及し、有望なマーケット性をもつに至った本件物品につき、改正法は、これを課税の対象としたのである。
原判決がいうように、従来の取扱いを追認し、改正後の法律を改正前の事実に適用するなどという考えは、甚だしい錯誤である、
そもそも行政解釈により納税義務を課するなどという姿勢は、行政の便宜のため、国民に不法な義務を課するものである。原審が行政庁の取扱いを正当なものであるかの如く縷々説示するのは、徴税処分というものの厳しさを忘れたものである。罪刑法定主義の理念には精通している筈の原審が、これと並行する租税法律主義に徹しないのは、酷税に悩む庶民として遺憾にたえない。
第五点 原判決は、物品税法別表前書き第四項の規定に違背した違法がある。
「別表」の読み方についても「課税物品の適用に関する通則」として、法律で定められているので、物品税法別表前書きの定めるところによるべきところ、原判決は、これを見逃した誤りを犯している。すなわち、別表の読み方についての規定である「課税物品の適用に関する通則」の前書き四項は、「この表の各号の品目欄に掲げる物品は当該各号の類別欄に掲げる物品の範囲内のものとし、当該物品について限定がある場合には、当該品目欄に掲げる物品にも同様の限定があるものとする」と、定めている。
この規定について、『国税庁消費税課長監修、同課長補佐編、昭和五七年九月二十日、(財)大蔵財務協会発行の「物品税の実務」(一二二頁~一二二頁)』の解説は、次のようになっている。
すなわち、『例えば、「品目欄」には「大型冷蔵庫」「小型冷蔵庫」という物品名が掲げられており、氷やドライアイスで冷却する方式の冷蔵庫も一般に冷蔵庫として取扱されていて、品目欄に掲げられている「大型冷蔵庫」又は「小型冷蔵庫」に該当するようにみえるが、その種類別欄には「電気器具類、ガス器具類及び液体燃料器具類並びにこれらの関連製品」と規定されており、氷やドライアイスにより冷却する方式の冷蔵庫はこのいずれにも該当しないので、物品税の対象となる冷蔵庫ではないこととなる』と。
本件物品「ウインドサーフィン」が課税物品に該当するとされる別表の「品目欄8」には、「ゴムボート、ファルトボート及びゴムヨットその他これらに類する折りたたみ式の水上遊戯具類」と規定され、「類別欄」には、「舟艇類及びその関連製品並びに娯楽用品、スポーツ用品及び遊戯具類」と規定されているのであるから、「別表」は、「舟艇類」、「娯楽用品」、「スポーツ用品」、「遊戯具類」を、それぞれ相容れない概念として規定していることが判る。
もし、これらの概念を区別しないのであれば、別表の「品目欄」は、「ゴムボート、ファルトボート及びゴムヨット並びにこれらに類するもの」と規定されていなければならない筋合である。
つまり、本件「別表」の「品目欄」は「ゴムボート、ファルトボート及びゴムヨットその他これらに類する折りたたみ式の水上遊戯具類」と、いろいろな用途をもつゴムボート、ファルトボート等のうちの「遊戯具類の中の水上遊戯具」と、ことさらに限定しているのであるから、「遊戯具」と、「スポーツ用品」とは相容れない物品の概念として明確に区分して解釈しなければならない。
なお、
(1) 「遊戯具」の意義を解釈するに当たっては、前記「課税品表の適用に関する通則」の「七」に「この表における用語の定義その他一から四までの規定の適用に関し必要な事項は政令で定める。」と規定されているところ、本件に関しては、政令で何も定められていないので、一般社会通念に従うということになる。
そこで、まず、これらの用語は、「辞典」にどのように載っているかを、一九八八年一月三日、三省堂発行の辞典「大辞林」で調べてみると、それぞれ次のように記載されている。すなわち
『イ、舟艇 … 小型の舟。
ロ、娯楽 … 心を慰め楽しむこと。またそのような物事。
笑い、喜ぶような楽しみ。
ハ、スポーツ … 余暇活動の競技・体力づくりのために行う身体運動。
陸上競技・水泳・各種球技・スキー・スケート・登山なとの総称。
ニ、遊戯 … <1>遊びたわむれること。
あそぶこと
<2>幼稚園や小学校などで運動と娯楽を兼ね、集団内での役割を自覚させることなどを目的として一定の方法に従って行う遊び。
自由遊戯と組織的遊戯とがある。
ホ、レジャー … 余暇。また、それを使ってする娯楽』と。
以上のとおりであるから、これらの用語は、一般社会通念(日常用語)でも、明確に区別されている。
(2) 本件物品について、『「乙第一号証」(「ウインドサフィン全科」六頁)にも次のように記載されており、ウインドサーフィンが遊戯具でないことは明らかである。すなわち、『幅広く手軽な割りには、とっつきが難しく奥が深い。どんなべテランのウインドサーファーでもビギナーの頃はセイルアップに苦労して数え切れない程の沈をしている。そこでガンバッた者だけがセイリングの爽快感を味わえるわけだ。さらに風や波のコンディションは毎日違い飽きることがないというのも大きい魅力だろう。』とある。これを「意訳」すると、『現在は、上手になっている人でも、帆に風を受け推進力を得るように水面上にくっついている帆を引き上げ、ブームを手でつかみ、帆を推進力とする(これを「セイルアップ」という。)までには、数え切れない程何回も水中に落ちている(水中に落ちることを「沈」という。)。「セイルアップ」できるまで頑張った者だけが、帆走の爽快感を味わえる。風や波の状態は、毎日のように違うから、乗り方に工夫がいるので奥が深く、それが却って魅力となり、飽きることがない」ということになる。
このように、バランス感覚と忍耐を要求されるものは、「遊戯」とは程違いものである。
前掲「大辞林」には、ウィンドサーフィンについて
次のように記載されている。すなわち、
『ウィンドサーフィン … サーフボードの上に帆を張り、風を利用して一人で水上を帆走するスポーツ。
ウインドセーリング。
ボードセーリング。』と。
(3) また、実際の課税対象物品の取扱いについて、「遊戯具」と「運動用具」とは明らかに区別されている。
この区分について、『国税庁間税部消費税課長、半田剛著、昭和二九年八月二五日大蔵出版株式会社発行の「物品税法精解」(七四頁)』の解説は、次のようになっている。
すなわち、『………24 スキーでその長さが曲尺三尺五寸以下のものは、専ら児童が遊戯のために使用するものであるから、遊戯具として取り扱われることとなっている(達・別表三八<43>)。25 スキーストックでその長さ(石突を含む)が曲尺三尺以下のものは右の趣旨と同様であるから遊戯具として取り扱われることとなっている(達・別表三六<44>)。……27 運動用具で非課税とされている物品で、飾物・玩具・遊戯具・揺籃および乳母車類として本号に掲げられていないもの、たとえば二尺八寸以下の野球用のバットなどは運動用具として非課税にした趣旨にかんがみ本号によっても課税しないこととしている(達・別表三八<46>)。』と。
この解説から明らかなように、遊戯具は、児童が使用するためのものであるから、一般成人用のものを児童が使用し易いように長さ大きさを児童用に造り変えられているので、同じ名称のもの(例えば、スキー)でも「遊戯具」と「運動用具」とを区別することができるのである。
なお、上告人が製造していたのは一般成人用のものであり、児童用のものは、一つもない。
第六点 原判決は、本件物品の課税対象物としての認定につき経験則に違背する。
原判決(一二枚目裏五行目から一三枚目表三行目)は、『ところで、「折りたたみ式水上遊戯具類」に該当する物品が「これら(掲名物品)に類する」ものであるかどうかの判断に当たっては、物品税の課税の趣旨並びに掲名物品の性状、構造、機能、用途等を総合的に検討するとともに、本件規定自体についての立法の経緯をも考慮して、本件規定が物品のいかなる特質に着目して課税の対象を定めたのかを合理的に把握することが必要であるが、少なくとも機能又は用途の点において、掲名物品に共通すると認められる特質が当該物品にも存する場合には、当該物品が掲名物品に類するものと解して妨げないというべきである。』と説示している。
まず、問題なのは、何の理由も示すことなく、「掲名物品の性状、機能、用途等を総合的に検討することが必要である」としながら、そのすぐ後で、「少なくとも機能、又は用途の点において、掲名物品に共通すると認められる特質が当該物品にも存する場合には、当該物品に類するものと解して妨げないというべきである。」と説示している点である。しかしながら、これは、前後撞着であり、性状、構造、機能、用途等の相互関連を忘れた論理である。
また、原判決には「類する」と「類似する」について上に指摘したように用語の混乱がみられるので、両者について、昭和四九年九月一日東京堂書店発行の「類義語辞典」で確認してみると、その三〇六頁には次のように記載されている。すなわち、
『(1) 「にる」「にかよう」「類似する」はだいたい同じ。
「類する」はこれに近いが、一定のわくを考えて、その同じわくの中にはいるということを表わす。たとえば、「A君はB君ににている」のように単に二つの個物を比較しているばあいには「類する」とはいわず、「A君に類したタイプにはB君C君……などおおぜいいる」というように、さらに多くのものが同じわくでくくれるばあいに使う。
(2) 「にる」「にかよう」「類似する」は、「よくにている」「もっと(ひじょうに、すこし)にている」のように、比較・程度をあらわすことばがつくことがある。つまり、「にる」には段階を考えることができる。「類する」では、「よく(もっと……類している」などとはいえず、程度は問題にならない。
(3) 「にる」は現象的で、「類する」はもっと本質的。「松に似た木」は、みたところ松にちかい木だが、「松に類する木」は植物学的に松に近い木でかっこうがにているかどうかではない。
なにかをうつしたもの、たとえば、絵、写本、ものまねなどが対象ににていることをいうのには、「類する」がつかえないのも現象だからだろう。「類する」が本質的に同類であることをあらわすために、それには、程度の差が問題にならないのだろう。』と。
したがって、原判決が「少なくとも機能又は用途の点において掲名物品に共通すると認められる特質が当該物品にも存する場合には当該物品に類するものと解して妨げないというべきである。」というのは明らかに「類する」を「類似する」とすり換えて解釈しているといえる。
また、「課税物件に当るか否かの判断基準は、物の性状のみを重視して決定すべきものではなく、材料又は原料、形態、構造、製造方法性質のほかその用途、使用方法又は価格等の実質について総合的に検討すべきものである(東京高裁昭和四二年六月二八日判決下級刑集九・六・七九四頁、同旨(昭和五五・九・一一裁決、裁決事例集番号二〇「昭和五五年度・第一・二一五頁)、(昭五七・一二・一七裁決、裁決事例集番号二五「昭和五七年度第二」一〇三頁)(昭和五八・九・二裁決、裁決事例集番号二六「昭和五八年分一五八頁)という吾人の経験則に違背するものである。
そして、『ある用途に供する目的で製造された物品は、その用途に適するように製造されるのが一般的であって、その構造が用途を決定し、機能を決定するといっても過言ではない程、物品の構造は、その物品の特性を判断する上で最も重要なウェイトを占めるのである。しかも、同一品名の物品であるからといって、必ずしも同一構造を有するとは限らず、一般的な構造でないものが多々あり、また、多目的物品については、その多用途を充足するような複雑な構造となっているものがあるから構造のいかんについては特に留意する必要がある。』『前掲「物品税の実務」(一二九頁)』のであるところ、原判決は、「機能又は用途」の点だけを捉えて判断しているのは、吾人の経験則に違背し、判断方法自体が誤っている。
詳言すれば、原判決が、物品を対比する場合、一般に誰もがそうしているように、構造、原材料、形態、製造方法、性質、用途、使用方法機能等の実質について、総合的に判断するという、吾人の経験則に従って対比判断すれば、本件物品は、ゴムボート等の掲名物品と類を同じくするものではなく、また、水上遊戯具に類するものでもない、という結論が容易に導き出されるのに、事ここに出ず、たやすく機能、用途のみに着目して判断したのは、判断方法自体が誤りであり、両物品の対比を誤ったものである。すなわち、本件物品は、ゴムボート等の掲名物品と異なり、ゴム製品ではなく、児童向けの「遊戯具」でもなく、更には、折りたたみ式でもなく、専ら成人向けのスポーツ用品である。
以上